安全運転の為のドライビング理論 【摩擦円の理論とは?】

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このブログの趣旨とは全く関係のない話で大変恐縮なのですが(笑)、

皆様の少しでも皆様のお役に立ちたいとの想いから、先日予告させていただいたように、安全運転の為のドライビング理論ということで、少し具体的なお話しさせていただきます。

安全運転の為のドライビング理論
実は、私は大学で自動車工学を勉強し、社会人になってからは、レーシングドライバーとして数年間活動しておりました。日本や海外のフォーミュラレースに参戦し、優勝やポール・ポジションも経験することができました。そのくらい、とにかくドライビングが大好...

ご興味のある方は、是非、お付き合いください。

 

摩擦円の理論

レーシングドライバーなら、当たり前と言っていいくらいの知識なのですが、タイヤのグ

リップには方向性があり、大きく分けて縦のグリップと横のグリップの2種類あります。
この2つを分かり易く説明したものに摩擦円(フリクションサークル)の理論というものがあります。

 

図1は、摩擦円といって、中心点から下方向がアクセルを踏んでいる時の駆動力、上方向がブレーキング時の制動力、左右方向が横方向のグリップを表しています。

 

ドライバーは常にこの摩擦円内(タイヤのグリップ内)で運転しなければなりません。

 

この理論を理解することで、駆動力、制動力、横方向のグリップ力を使い分けることの必要性を視覚的に理解することができます。

 

 

 

コーナリング時の摩擦円

話を分かり易くする為に、タイヤの限界付近でのコーナリングを考ます。

①まず、直線部分でのブレーキングでは縦方向のグリップを100%使います。(図2A)

②しかし、このままでハンドルを切ったとしても横方向のグリップが全くありませんので、車は反応せずに直進します。コーナリングする為には縦方向のグリップを少しずつ横方向のグリップに振り分けてやる必要があります。(図2B)
ブレーキを緩める。

③コーナリングが始まり、車が加速も減速もしない状態になると図2Cの状態になり、この時に横方向のグリップが最大になります。(図2C)

④今度は加速です。これまでとは逆に横方向のグリップ力に使っていたグリップ力を駆動力に振り分けていきます。(図2D)

⑤コーナーを脱出し、ハンドルがまっすぐの状態になったら、駆動力に100%の力を使います。(図2E)

 

 

上記②にあるように、ブレーキングでタイヤロックさせてしまうと、下記のようにハンドルを切っても直進してクラッシュしてしまいます。
(今はABSがほぼ標準装備となっておりますので、このようになることは少ないと思いますが。)

これは、もう30年近く前の映像ですので、もちろんABS装着車ではないですが、ブレーキングで上記摩擦円の縦のグリップを100%使っているため、いくらハンドルを切っても車は曲がらない状態になり、クラッシュしてしまっています。
この時、少しブレーキを弱めてタイヤを転がしてやると、車は向きを変えて、少なくともクラッシュは免れたはずです。

但し、これはサーキットでのとても極端な例ですので、あくまで知識として留めておいていただければ幸いです。

自動車にはタイヤが4つついているので、もちろん摩擦円は4つ存在します。

車がブレーキを踏んで減速している時には自動車が前のめりになる為、後輪よりも前輪の摩擦円が大きくなり、逆に加速している時には後輪に荷重が加わる為、後輪の摩擦円が大きくなります。

レーシングドライブでは、この前後の加重変化を利用してコーナリングしていきますが、一般道でも運転でも、この加重変化を利用することによって、より安全に運転できるのではと思います。

また、タイヤの劣化、路面コンディションによってもこの大きさは変化しますので、注意が必要です。

今回は、タイヤのグリップについてお話させていただきました。

次回は、何故、車は旋回することができるのかをお話しさせていただきます。

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